アルベール・ジャカール/ユゲット・プラネス

『世界を知るためのささやかな哲学』

2018年6月13日(水)推薦図書 

1995年1月、フランスのラスコル高校の哲学の先生であるユゲット・プラネスの発案で、ある生物学者の講演が実現しました。その講演を行ったのが、生物学者で遺伝学の第一人者であるアルベール・ジャカールです。「成熟した人類を目指して」というテーマで高校生たちに語りかけ、生徒たちと活発な議論を交わしました。

 

この出会いがきっかけになり、哲学の伝統的な問いに対して、遺伝学者がどのような答えを提示できるか、という対話の結果生まれたのが『世界を知るためのささやかな哲学』の一冊です。

 

 

テーマが目次になっています。フランス語のアルファベット順です。

-他者 Autrui

-生物学 Biologie

-幸福 Bonheur

-意識と無意識 Conscience et inconscient

-人口統計学 Démographie

-時空連続体 Espace-temps

-倫理学 Ethique

-友愛 Fraternité

-遺伝学 Génétique

-ヒトラー Hitler

-想像力 Imagination

-正義と権利 Justice et droit

-クウェート Koweït

-自由 Liberté

-数学と論理学 Mathématiques et logique

-自然、文化 Nature, culture

-起源 Origine

-権力、国家 Pouvoir, état

-知能指数 Quotient intellectuel

-宗教 Religion

-叡智または哲学 Sagesse ou philosophie

-技術 Technique

-理論と経験 Théorie et expérience

-労働 Travail

-ユートピア Utopie

-真理=真実 Vérité

-W、そしてフランス語 W et la langue française

-X(未知数) X(l'inconnue)

-陰と陽 Yin et yang

-エレアのゼノン Zénon d'Elée

 

このテーマごとに、ユゲット・プラネスが質問や疑問を呈し、それに対してアルベール・ジャカールが答え、議論を深めていくという対話形式です。各章が短く、ここで詳しく知るための本というよりも、「もっと知りたい!」「どうしてこうなんだろう?」と興味関心を引き起こしてくれます。

このため、一般の哲学書を読むのに比べ、非常に読みやすいと思います。しかし注意したいのは、生物学者と哲学者という専門性の枠組みを感じないほど、両者共に深い知識をもとに議論をしています。

 

哲学、生物学、言語学、政治、宗教、経済と、あらゆる分野で、たくさんの知識や定義やことばを引用しながら、わたしたちが当たり前に思い疑問を持つことも忘れてしまう一般常識に揺さぶりをかけてくれます。自分の頭で世界を見て、自分の言葉で表現できるようなるための必読の書といえましょう。

 

この本の何よりもすばらしい点は、知識や教養が人生そのものと結びついていることを示してくれる点です。学ぶことがインテリや一部の職業の人のためではなく、生きる力になることを理解させてくれます。

 

いくつかの議論をご紹介します。

●他者 Autruiから

哲学を学ぶものなら世代を超えて≪地獄とは、他者である≫という有名なサルトルの言葉を学ぶが、それに対する反論は?

この言葉はある戯曲の中のセリフにすぎないこと、他者はあくまで他者であるから地獄とはなりえず、他者が地獄を生み出すのはわたしたちと人間関係を持とうとしないとき、「地獄とは、他者から排除されること」。

他者がいなければ自分は存在できない、他者から見られて初めて今のわたしが作られる。「私とは、わたしが他者たちと結ぶ絆のことだ」

誰もが抱えている問題の核心は、自分自身になること。ただし、自己変革は他者との交流があって初めて実現できるもの。わたしたちは人間になるための必要な器官を自然から与えられているが、自然はどの道をたどればいいか教えてくれない、自分が存在することを知る能力の獲得は他者の視線を浴びなければならず、真の人格を作り上げるには少しずつ他者との絆を結んでいかなければならない。

 

●自由 Libertéから

ヴォルテールは≪私はあなたの考え方が嫌いだ。しかし、あなたがそれを表明できるように、私は徹底的に闘いぬくつもりだ。≫といい、マラーは≪自由の敵に対しては、自由は与えられぬ≫といいました。あなたはどちらに賛成するか?

これに対し、ジャカールは次のように言います。もちろん耳を傾けなければいけないのはヴォルテールのほうだけれども、「自由の敵」から突き付けられた問題を避けることはできない。理想を言えばどんなことであろうと発言できるほうがいいが、自由に敵対する者と闘うためには一時的な強制権を行使する必要がある。まだ教育を受けていないわが身を守ることのできない小さな子供たちが相手の場合はなおさらである。

 

 

ここに書かれているのは、冷たい字の羅列、乾燥した知識ではありません。愛し、信じ、学び、向き合い、生き、世界を知るための知であり、テストの点数では到底図りえない人類が紡いできた叡智の破片です。

 

グローバル人材を目指す人にもおすすめの入門書です。自分の意見をどのように述べ、どのように意義深い対話を進めていくかの参考になるでしょう。オール・オア・ナッシングで、好き嫌い、善・悪を決めるのではなく、多様な意見や生き様の人と共存できる場所を見つける方法を学べます。

 

 


  おススメポイント

①実際に生きていく上での問題と向き合う考えるヒントを与えてくれます。

②簡単に読むことができ、幅広い知識を学ぶことができます。

③多角的な視点から見る物の見方を学び、有意義な対話を進めるノウハウをつかみ取れます。


世界を知るためのささやかな哲学




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