危険な集団思考Groupthink

2018年10月15日(月)一般教養 

あなたは自分の決定、行動、そこから生じる結果を、どれだけ自分の考えや意見に基づいて行っているでしょうか?

曖昧にしたままなんとなく集団の合意ができるまで待ち、合意が形成されたら正しいこととして動いている、そんなことも日本の組織では多々あるかもしれません。

そうした集団思考=Groupthinkについて、今回は考えてみましょう。

危険な集団思考|一般教養|ルシディチュード-灯台教養学部

 


集団思考=Groupthinkとは何か?

1961年、フィデル・カストロ政権打倒を目的に、ケネディー大統領とアドバイザーで決断したピッグス湾侵攻は、結果としてCIAにより訓練されたキューバ人亡命者の反革命傭兵軍1400名のほとんどが捕虜となり、あるいは殺されてしまい、わずか3日間でキューバ軍に撃退されてしまいました。その上、キューバとソ連との急接近、そして翌年のキューバ危機を招いたとされ、歴史的失敗とされています。

自分の下した決断の結末を見届けたケネディー大統領は、

「How could we have been so stupid? どうして我々はここまで愚かであれたのだろうか?」

と口にしたと言われています。

 

この事件を一つのきっかけに、アメリカの心理学者Irving Janisは<Groupthink 集団思考>の概念を打ち立てました。

彼は、<Groupthink 集団思考>を以下のように定義しています。

”The mode of thinking that persons engage in when concurrence-seeking becomes so dominant in a cohesive in-group that it tends to override realistic appraisal of alternative courses of action.”  

(団結傾向のあるグループ内で意見の一致を探すことが非常に優勢になったために、選択の余地のある他のアクションの進行の現実的評価を無視するという思考方法。)

そして、以下の8つを<Groupthink 集団思考>の徴候として示しました。

 ①不死身の錯覚

②グループ内特有の道徳規範に対する信用

③集団的正当化

④他のグループへのステレオタイプ(固定観念)

 ⑤反対者への直接的プレッシャー

⑥自己検閲

⑦満場一致の錯覚

⑧自推の用心棒

 

もっと身近なフィーリングとして言えば、こんなことはありませんか?

例えば、自分が所属する組織・グループにいれば、なんでもできてしまうような気になったり、自分は正しいんだと思い込んだり、みんなそうなんだからいいんだと感じたり、違う意見の人に対する頭からの批判的な態度を持ったり、他のグループに対する固定概念で敵視したり、といったことを自分も経験したり、どこかで見たことがありませんか?

それが<集団思考=Groupthink>なのです。

自分で考えること、目の前のことを理解しようと努力することを放棄し、集団の合意や意見に身を任せてしまうこと。

<Groupthink 集団思考>の恐ろしい点は、一つの集団から組織やパブリックにとって有害なアイディアが生まれ、後から振り返れば阿保らしいことであっても、それが実現してしまうことなのです。

中学校のいじめ、会社組織による犯罪、国家の戦争、民族の虐殺・・・集団思考が原因でわたしたち人類は何度でも恐ろしい加害者となり、悲惨な被害者になっているといえます。そして、それはわたしたち誰にでも当てはまります。

 


集団思考=Groupthinkを打破するには?

危険な集団思考を打破するためには、ディベートやディスカッションを積極的に採用する姿勢を組織や集団のリーダーが自ら示し、意見を出しやすいグループの雰囲気をつくる必要があります。

 第44代アメリカ大統領当選が決定したオバマ大統領は、2008年12月1日の記者会見で、次のように語っています。

“One of the dangers in the White House, based on my reading of history, is that you get wrapped up in groupthink and everybody agrees with everything and there's no discussion and there are no dissenting views. So I'm going to be welcoming a vigorous debate inside the White House. ”

(自分の歴史解釈に基づくと、ホワイトハウスにおける危機の一つは君たちが集団思考にはまり、みんなが全てに賛成し、ディスカッションもなければ反対意見もなくなることだ。よって、わたしはホワイトハウス内において、激しいディベートを歓迎するつもりだ。)

今のアメリカのトランプ政権も、日本の安倍政権も、集団思考を好むリーダーが率いる政権だといえるでしょう。その方が決定が早く、実行力があるように一見見えますが、歴史的なビジョンに立ってみてみる時、果たして良い決定なのかを考える必要があります。「これでいいんだ」と考えることさえできない場合、それはすでにあなた自身も国家という大きな枠組みの集団思考に陥っているといえるでしょう。

 

日本企業でも、ホンダの“わいがや”など、いくつかの企業では積極的に集団思考を打破する対策がとられています。これから国際競争の厳しさが増すほど、新しいカルチャーとして「話し合うことのできるグループ作り」への対策が益々求められるでしょう。

何よりも「個々人が意見を持ち、異なる意見を出し合い、それに基づく決定、そして実行が行える、多様な人生観を持って共に生きられるグループ」であることが本当に大事なことなのだと、一人ひとりが意識を持ち続けることが大事だといえます。



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