ネット加害者ならないために役立つ知識

子どもの勉強教え方教室

2019年01月31日(木) 自由研究 

ネット加害者ならないために役立つ知識

ネット環境の発達により、親の知らぬ間に子どもたちがネットの世界でコミュニケーションをする機会が増えています。

ネットでの被害者になる危険性はもちろん、加害者になる可能性も。

子どもが加害者になるのを防ぐために役立つ知識をご紹介します。



未成年者による加害者としてのネットトラブル

子どもがネット加害者になりうる可能性が最も高いのは、仲間同士のLINEグループでの書き込みや、掲示板の書き込みです。仲間同士の書き込みにエスカレートし、自分としてはからかいのつもり、軽い気持ちでやった行為が、いじめ加害者と認定され、未成年者が損害賠償を請求される立場に立たされる実例も増えています。

2018年12月10日、川口市のいじめ問題に対し、実名や行動が書き込みされた掲示板を運営する通信事業者に対し、東京地裁(志賀勝裁判長)は契約者の情報(発信者情報)を開示するように命じました。いじめっ子を特定できるとマスコミやネット上で大きく取り上げられました。

自分の子供は大丈夫、そうあなたは自信をもって言えますか?

今回は、ネット加害者にならないための家庭教育に役立つ匿名性と攻撃性の関係をまとめた実験結果をご紹介します。


なぜ人は匿名だと攻撃的になるか?

匿名性だからこそ発達してきたともいわれるインターネットの世界。 本当に匿名性が人々の攻撃性を増すのでしょか?

匿名の状態に置かれた人がどのような反応を示すのか、さまざまな科学的実験がこれまでされてきました。

以下の実験とその結果を示しながら、なぜ人は匿名だと攻撃的になるかを考えるヒントになる知識をご紹介します。

 

  • 女子大生がKKKのユニフォームを着たら?
  • 社会心理学者Philip Zimbardo (1970, 2002)は次のような実験をしました。

    ニューヨーク大学の女子学生に、一部の学生はそのまま、一部の学生はみんな同じKKK*のメンバーのような白いコートとフードをかぶせました。学生たちに他者に電気ショックを与えるようにという指示を出すと、結果は扮装せず大きなネームタグを胸につけた生徒よりも、扮装した生徒の方が約2倍長く電気ショックを与えたということです。ライトを暗くしたり、サングラスをつけたりさせただけで、人びとに匿名性の感覚が生まれ、喜んでだましたり利己的な態度をとるようになりました。

    *KKK(クー・クラックス・クラン)・・・アメリカの白人至上主義団体。白装束で頭部全体を覆う三角白頭巾が彼らの制服で、主義に従い人種差別や性差別の暴力的な事件やパフォーマンスを繰り返した。19世紀に誕生し、20世紀に最盛期を迎え、現在は勢力は弱まっているものの存続している。


  • ハローウィンの子どもたちの実験
  • 自分の個人的なアイデンティティが明確にならない状態だと攻撃性や無責任性が増すというのは、大人だけでなく子どもたちにも見られます。

    ハローウィンで、シアトルの1352人の子どもたちのトリック・オア・トリートを観察した科学者がいいます。

    子どもが町中を分散して27の家の1軒を訪ねるとき、一人であろうがグループであろうが、実験者は彼らを温かく迎え、「アメを1つとってね」と言い、キャンディーをそのまま子どもたちに渡してしばらく彼らだけにして放っておくのです。

    この状態を隠れている観察者が記録したところ、グループで家を訪ねた子どもたちは、1人きりで家を訪ねた子どもたちより、2倍の確率で余計にキャンディーをとりました。

    また、名前と住所を尋ねられた子どもは、匿名にされたままの子どもに比べ、違反が半分以下となりました。 違反率は、状況によって劇的に異なります。

    グループへ没入し、匿名になることで没個人化がおこると、ほとんどの子どもは余分にキャンディーをとったということです。

    キャンディをたくさんとるくらい大したことはないと思いますが、誰かと一緒にいるかそうでないか、自分のアイデンティティが明確になっているかそうでないかで子どものうちから態度が変わるというのは非常に興味深いものがあります。

     

  • 女子大生が看護師の格好をしたら?
  • ここまでは匿名性が攻撃性を増したといえる結果が出ているのですが、反対に、匿名性が攻撃性をやわらげたという実験結果も実はあります。

    Robert Johnson, Lesile Downing (1979)は、他者が受けるべき電気ショックがどれだけのものにするかを決める前に、ジョージア大学の女子学生たちの一部に看護士の制服を着せました。違う一部の学生には、それぞれの名前がはっきり提示されるネームタグをつけます。

    この結果、名前がはっきり提示されていることで個人的アイデンティティーが強調されている状態におかれた生徒よりも、看護師の制服を着た学生のほうが攻撃性が減少したのです。看護師の制服を着るということは、同じ制服を着て身体的匿名性が高まっているにも関わらずです

    理由としては、看護師の制服を着用したことで、病人の看病をするやさしい看護師といった多くの人が抱いている通念ともいえる看護師という社会的アイデンティティーが攻撃性を弱めたと考えられています。

     

  • 没個人化と兵士の行動
  • ただ、やはり匿名性、没個人化が攻撃性を増すことの方が一般的だといえます。

    人類学の研究からも、没個人化の兵士の文化は敵に残忍な仕打ちをする文化であったことが明らかになっています。

    Andrew Silke (2003)の研究では、北アイルランドで起きた暴力的攻撃500のうち206件は、マスクやフードをかぶり、他の顔の変装をした攻撃者による実行されたそうです。

    変装していない攻撃者に比べ、匿名性の高い攻撃者はより深刻な傷を負わせ、より多くの人びとを攻撃し、より破壊行為にコミットした、という結論付けになっています。

    ナチスドイツがユダヤ人を虐殺する際、最初は銃で一人ずつ実行していましたが、耐えられなくなり士気が下がるドイツ兵の様子を見て、ヒムラーがガス室を考案したといわれています。虐殺されるユダヤ人にとっても、虐殺するドイツ兵にとっても、匿名性は格段に高まり、状態は平常化していったと分析している学者もいます。

     

  • 匿名・没個性化の60の実験の分析
  • こうして様々な実験が積み重ねられてきたわけですが、これらをTom Postmes とRussell Spears (1998)は分析しました。

    匿名・没個性化の60の実験の分析によると、匿名になることは自覚がよりなくなり、グループへの意識を高め、状況において提出されるきっかけ(KKKのようにネガティブなものにせよ、看護婦のようにポジティブにせよ)により反応しやすくなると結論しています。

    つまり、匿名の状況では、人は自分の頭で物を考えず、周りの状況に流されてしまいがちになるということです。

    攻撃性が高いネット社会においては、環境が攻撃的であり、また攻撃的なことが実世界より許容されているため、匿名の状態は攻撃性をさらに増す、といえます。


    子どもがネット加害者になるのを防ぐために親ができること

    親による家庭教育が子供がネット加害者になるのを防ぐのに役立ちます。

     

    多感になったり反抗期に突入してくる年齢でもあるとは思いますが、やるかやめるかを押さえつけるのではなく、子ども自身に考えさせるスタイルで以下3つにうまくポイントをしぼって話し合ってみてください。

    • 加害者になってしまった場合に起こりうるトラブルやリスクとは何か
    •  
    • ネット社会ではだれも加害者になりやすい傾向があるが自分たちはどうか
    •  
    • ネットの使用時間はじめルールをどうするか

    特に、2を話し合う時には、この記事で紹介した実験結果を教えてみてください。子ども自身も、一人ひとりが匿名性が攻撃性を増すという一般的傾向を学び、自覚することがとても大切です。それは、学校生活のいじめ問題や、友人と軽い気持ちで手を出してしまう非行問題を自ら考える一歩にもなるでしょう。


    まとめ

    現段階の結論としては、総じて匿名性は攻撃性を高める、というものです。

    特に、匿名性が保たれ、攻撃性の高いコミュニケーションが成立しやすいネット社会では、この傾向が強くなりやすいといえます。

    子どもたちがネット加害者になるのを防ぎために親ができることは、やるかやめるかを押さえつけるように決めるのではなく、家庭でそのリスクや匿名性が引き起こす攻撃性というものについて話し合い、子ども自身に考えさせることにあります。


    読み終わったら考えてみよう

    • 匿名性は一般的にどのような状態を導きますか?
    • いじめやネット上で子どもたちが加害者にならないためにできる対応策を考えてください。


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